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シティポップスについて(6)

Sound_2  番外編として、角松敏生の新譜を前回取り上げたのですが、そこで佐藤博のことにちょっとふれましたので、今回は佐藤博について。

 シティポップスでこの人をはずすことはできない、と誰もがおもうところでしょうし、僕もこの人のサウンド、アレンジ、キーボードプレー等、25年以上まえから好きで未だに聴き続けている人であります。

 シティポップスを規定するときに重要な要素にアレンジがある、ということは再三にわたって書いてきましたが、この人も重要なアレンジャーの一人。清水信之、鳥山雄司等、シティポップスに欠かせない人たちの中でも、佐藤博はちょうど70年代後半から80年代に楽器のテクノロジーの進化をいち早く取り入れ、コンピューターミュージックをジャパニーズポップスに自然な形で組み込んだ第一人者でありましょう。

 彼の代表作といえば「AWAKENING」(1982)であるでしょうし、僕もそうだと思っていますが、このコンピューターミュージックをシティポップスとして昇華させたアルバムとしてはこの「SOUND OF SCIENCE」(1986)だと思っています。とにかく、シンセやサンプリングの使い方がほんとかっこよく、センスのよさが光ります。80年代のひとつの特徴は先ほども言いましたが、テクノロジーの進化、つまりいままでバンドサウンドだったものをシンセドラムやシンセベース、サンプリング音の多様、シーケンサーによる自動演奏等であり、とにかく今までの音、サウンドを、ただ新しいものに置き換える、という安直なものも山のように出てきた時代。ですので、今、80年代のサウンドを聴きなおすとその音のチープさが目立ち、とても聴けないものも。

 しかし、佐藤博のサウンドは前述したただ置きなおしただけ、というものではなく、明らかにそのテクノロジーだからこそのオリジナリティを出していたと言えます。その、練りに練られたシンセサウンドは確かに、今この21世紀には新しさはないかもしれません。でも、あの80年代にこれだけの先進性を日本のポップスに自然と溶け込ませて、違和感なく楽曲を仕上げていた人は彼以外にいないはず。そして、シティポップスとしてのスタイリッシュな魅力を存分にいかしたサウンド作りは今聴いても、それはかっこいいのです。

 このアルバムの中でも特に素晴らしいのはビートルズのカヴァーをしている「抱きしめたい」。このアレンジは原曲とはまるで違う雰囲気を作っていて、ファンキーなシンセベースに実に洒落たテンションコードをのせ、今までに聴いたことのない「抱きしめたい」に仕上がっています。僕は大学生のときに学生寮の部屋でこれを聴いていたら、音楽好きの先輩達が何人も入ってきて、この「抱きしめたい」はなんだといって、驚いていたのを思い出します。そのぐらい、ぶっとんだアレンジは、ビートルズカヴァーの中でも傑作中の傑作であると、僕は今も思っています。

 僕はCDを持っていますが、残念ながら廃盤でして、しかもYouTubeにもこの「抱きしめたい」の音源はなく、しかたがないのでこのアルバムのラストの曲「宇宙のエトランゼ」という曲のリンクだけはっておきます。これもいかにも80年代シティポップスではありますが、この曲のアレンジはわりと普通ですので、あしからず。

 21世紀にもなるとね、新しいサウンド、音というものも食傷気味で、また回帰して自然なサウンドを耳も求めているのですが、あの80年代にはこの佐藤博のサウンドにこそ、未来を感じていたのは僕だけではないはずです。

(このジャケットの佐藤博と、前回の角松のジャケットの本人が立っている写真のポーズがちょい似ている(ネクタイ締めて、手をポケットにいれ、足も途中できれてるし、右端にいるし)のが面白い、ね)

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