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震災後も日本は変わりはしないのか(3)

 危機的状況にいかに日本的全体主義が弱いか、ということがはっきり出た象徴的な話が震災時に津波に襲われたときの話だ。また逆に全体主義的な行動を否定して生き残ることができた人々がとった行動とはというと、それが津波てんでんこである。

 これは実に今の日本を象徴的に表している。逃げ遅れた人すべてではないと思うが,津波に襲われた地域の人々で地震発生後、近所の人々が集まりどうしようか話し合っているうちにやられた、という人々は少なくはあるまい。それは自分で決める、という前に先ず人の話を聞いてから、という行動が徹底的に染み付いてしまっている日本人ならではという感じがしてならない。一人で勝手やって後でなにかを言われるより(地域コミュニティならではの)その属する人々が合意でどうするかばかりを優先してきたからではないのか。

 これを、真っ向から否定したのが津波てんでんこであり、これは地震が起きたらまわりの人にかまわず各々勝手に逃げろ、という日本的発想とは間逆な行動であるのが興味深い。そして、ご存知のとおり危機的な津波に襲われるという状況を打開できるのは、この津波てんでんこのほうが全体主義的な方法よりも明らかに有効なのである。

 これは、地域コミュニティすら機能しない危機的状況を経験したから会得した、日本において特殊な場所の方法なのだが、ここに僕は震災以降、日本人が見つけなければいけないヒントがあると思う。つまり、社会的同調圧力からいかにして自己を切り離し、その上で自己決定できるかどうか、ということである。

 この社会的同調圧力、これはかなりやっかいだ。なぜなら大半の人が自分のことは自分で決めているさ、決定しているのは俺だ、と思っている。ところが実は決めていると思っていることはこの日本において、社会における属する集合体(会社であったり、その会社のある部署であったり、地域コミュであったり、同好する人々の集まりであったりなど)の総意に従っていることがほとんどなのだ。

 話を振り返ってもらいたい。この話の最初で、僕は自分が勤めていたサラリーマン時代の話を書いた。それはなぜか。組織の悪口を書こうと思ったのではない。日本の会社はこの同調圧力に屈することなく自己決定することがとても難しいのだ。自己決定ができないということは、責任の所在があいまいだということである。その決定に個人が責任を負わず何か起きたときはその属する集合体の全体責任で済ます。それは実に日本的調和の表れで、みんなで手をつないで、一人が悪いわけじゃないさ、悪いのは僕らみんなさ、という美しき世界観だ。それは外国からミサイルが飛んでこようと、津波に襲われようと、原発が爆発しようと。みんなでいれば安心だし、いっしょならなんとかなるさ、とりあえず相談しよう、そうしよう。しかし本当にこれでいいと思うのか、これが21世紀の日本の姿でいいのか。

 だからこそ、震災後にでた復興へのキーワードである絆という言葉、これに僕はとても胡散臭さを感じてしまう。もちろん、絆という本来持つ言葉の意味にではない。この絆という言葉の使われ方が、津波てんでんこではない、今までとなにも変わらない日本の状況、そうみんなで渡れば怖くない、という悪しき全体主義的意味に浸りきって涙するような感傷性、そしてなにかあるとそこに安心感を求めてしまう安易性、そのぬるま湯的な世界がこの期に及んでもいいと言うのか、と思えてしまうのである。というか、こういう概念というのは、安易に使うと本当に考えなければいけないことを覆い隠し都合のいい部分だけデフォルメして美化してしまう。特に震災のような危機的状況から何かを得て次に生かしていかなければいけないというのに、絆という言葉だけで満足してしまっていいのか。たしかにこの言葉で皆でがんばっていこうと思っているのに水を差し天邪鬼なやつだ、と思う人たちもいるだろうが、こういう状況だからこそ甘んじてはいけないし、ここを乗り越えていかなければ日本は変わることはできない、とまで僕は考えている。

 絆とてんでんこ、なんとも皮肉な相反する言葉なのだが、しかし実はこの二つを別々に考えずその互いの本質を理解して生きる術にすること、ここにこそこれからの日本のあるべき姿があるのではと僕は考え、そのことをさらに掘り下げて書こうと思う。

続く

 

 

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