2006夏の旅、二日目 秋田の山と海、県北の自然篇
この日も抜けるような青空、快晴であります。我ながらほんと晴れ男だなあと思いますよ。昨年も同じく快晴、秋田はやはり相性いいのかしらん。
朝、連れのお方のご両親が車で八森方面までドライブしながら案内してくれることで家族4人で出発。住んでいる合川から続く道の右を見ても左を見ても眩しいぐらいの美しい田園風景。これならどこもいかなくてもいいじゃないか、と思えるぐらいであります。もう、東京でこういう光景に飢えている僕としてはすでにここでおなか一杯なぐらい圧巻な自然を満喫です。
水は澄み、美しい川が流れ・・・あれ、藤琴川って書いてある。もしやここは!と思っていると、母上が「ここ、ここ、あの綾香ちゃん事件の」と教えてくれました。そうなんですよ。あの有名な事件はここで起きまして、そりゃあこの数ヶ月凄い騒ぎだったそうであります。
なにしろ、この美しい田園風景にそれほど多くない人が住んでいるところに、東京から取材の人々がどっと押し寄せたらしく、数少ない旅館は満杯、のんびり営業していたタクシーはフル稼働。事件書かれた雑誌はあっという間に書店、コンビニから消え、東京からわざわざ送ってもらう人も。職場、学校では毎日その話題で持ち切りでもう祭り状態だったらしいです。でもね、こののどかな自然と暮らしの中で、あんな非日常的事件が起こり、そしてそれといっしょにマスメディアがどっと押し寄せたら祭りになりますよ。どうしたってテンションがハイになっちゃうでしょうしね。あまりにそのバカ騒ぎとこの自然と人々のどかさが対比的に見えてしまうのは僕が都会になれてしまっているからなのかもしれないのですが。ともかく、こういう場所でもああいう事件が起きるし、むしろ逆に今ではある意味都会とは対比的な意味で特殊な場所だからこそ起きるのか、という問題も含んだ現代を象徴する事件であることは間違いないのです。こういう場所に来てまでそういうことを想起してしまう、これも今という時代、しょうがないことなのですねえ。
まあ、この話はここまでにして、自然はそんな人間の騒ぎとは関係なく雄大にそこに在るのして、畑の真ん中を真っ直ぐ続く道の途中で車を停めれば、そこは360度パノラマに広がる空。広大な場所にはさえぎるものは何もなし、もうつきなみですが自然の中の人間なんてちっぱけなものでありますなあ。もう、ここにたっているだけで自分がどんどん浄化されていくようです。これでいいじゃないの!東京でつまらんことで右往左往しようが、息苦しくなったらここに帰ってくればいいじゃないの、と。第二の故郷がこんな素晴らしい場所にできたことは今、本当に誇りに思いますです。
さて僕一人で「おおっ!!」とか言って勝手に感動しているのとは関係なく、連れのお方とご両親は楽しそうに会話。「あんた、ババヘラ買ってあげようか」と母上が連れのお方に。すると「あれは大腸菌たくさんついてそうでやだあ。でも懐かしいねえ」との答え。ん?なんすか、「ババヘラ」って?
これ秋田県の人ならみんなしっている言葉らしいのですが通称「ババヘラ」とはこの人たちのこと。このおばさんたちがこの格好で道のあっちこっちに座っているのでして、それは農道の真ん中だったり、駐車場だったり、すごい辺鄙な場所にぽつんといたりするのです。さて「ババヘラ」とはなにかということなんですが、このおばさんは実はアイスクリーム売りなんですね。じゃあなんで「ババヘラ」かというと、なんとババアがヘラでアイスをカップにすくって渡すからだそうです。いあや脱力しちゃいますね、凄いネーミングだなあ。それがしかも一般的にとおっているのも凄い。このおばさんたちトイレもまわりにまったくないところにぽつんと座っているので、それで連れのお方は「きっと用を足しても手も洗わないでヘラですくっているに違いない」と踏んでいるのだそう。「ババヘラ」秋田の夏の名物だそうであります。
そうこうするうちに車は八森の海岸に。この風光明媚な景色はもうなにも言葉必要ないでしょう。晴れ渡った先には男鹿半島も見える。海岸線は昨年乗車した五能線が走っています。夏の日の日本海は実に穏やかでとても冬の厳しさはここからは想像もできません。この八森という場所はハタハタ漁で有名な場所でして、民謡の歌詞にもでてくるのでご存知かと思います。毎年、冬にご両親からハタハタを送ってもらっているのですがこの小さな港から水揚げされているのですね。

もうどう撮っても絵になっちゃう場所でして今も思い切り息をすいこめばあの風の匂いがしそうなぐらいです。あんまり美しい場所の連続で感覚が麻痺しちゃうみたいでして、このとき僕はなんかぼうっとして立っていたみたい。ここで夕暮れを見たらまた素晴らしいことでしょう。いつか夕日が落ちるのを五能線の車窓から見てみたいものであります。
夏の日差しは相変わらず強いのですが東京で感じるのとは違いその日差しですらやさしいい光に感じます。この開放感、この空気、少しは伝わるでありましょうか。
特に八森から山道を上がっていくと空気はさらに澄みきっていきます。ほとんど林道といってもいい道はガードレールもほとんどなく、対向車がくるとすれ違うのがやっと。一歩間違えると急な谷底に、というけっこうスリリングな道でしてそこを父上の4WDは慣れたものでスイスイ上がっていきます。僕は高所恐怖症の小心者なので顔では笑いながら手にはじっとりと汗をかき、内心そわそわ。やっと車を停めてもらうとほっと一息です。
しかし、そこはまたまた素晴らしい眺めの場所。まったく人が普段入っている気配のない静かな山の中。もちろん、熊さんはたくさん生息しているのは間違いありません。かなり高い場所まで上がってもらいましたが先には八森の海が見えます。このまま上がっていくと道は行き止まり。先は白神の山々となり入山には制限があるわけです。前回、白神のブナ林は父上にガイドしていただいたので今回はパス。また、白神はいずれ訪れたいものであります。それにしてもほんと絶景ですねえ。
ちなみに連れのお方は蜂やアブがいるのでやだ、といって車から一歩もでませんでした。途中で出会った地元のおじさんが「アゥンブ、あぅんぶねぇ」(訳、アブ、あぶない)と洒落じゃなくマジで言っていたのが今でも頭から離れませぬ。
山道の途中には湧き水も。手が切れるように冷たく美味。道の脇には小さな清流、もちろん岩魚や山女が釣れるそうです。ああ、一ヶ月とはいいませんから一週間ぐらい毎日こんな清流でのんびり釣りなんぞしたいものですねえ。僕から見るとないものねだりかも知れませんが、こういう生活のほうが今はずっと魅力的に感じてしまうのです。
山を降り、また八森の海岸にあるドライブインのようなところで休憩。ここでビールとイカの一夜干し、サザエのつぼ焼き、生牡蠣などで乾杯。いやあ、たまらん。このイカがめちゃくちゃ美味い!なんでかしら、東京で食べる一夜干しなんかより味がしっかりしていて肉厚で歯ごたえもある。やっぱりその土地でその土地のものを食べるのが一番美味いのです。そしていつも言うことでありますがそれ以上の美食や贅沢って本当はないと思うわけです。
まあ、僕はこれで十分というか、これからの人生は余分なものを削っていってこういうシンプルなものやシンプルなスタイルにしていくのがいいように思ってきました。うーん、やっぱりいずれ都会を脱出して田舎暮らし目指そうかなあ。(連れのお方はムリムリといって相手にしてくれませんが)
帰りには道の駅によって御土産を物色。道の駅って都会だと馴染み無いですが、車の道路沿いにドライブインみたいにしてところどころにあり、そこでは休憩ができ、そこの土地の食べ物が食べれたりできるようになっています。また、近くの農家の人たちがスペースを分けて毎日取れたての野菜や、山菜、きのこなどを出品しています。これも実に楽しい。
夏だからこその、濃い色をしたナスやトマトは実に新鮮。こういうものを必要な分だけ美味しく料理したらそれだけでいい。無理に季節じゃないものや、遠くから取り寄せないといけないものじゃなくても、十分なんですよね。こういう場所にくるとそう思うのだけれど、これが都会に帰るとやれイベリコ豚だ、ムール貝だと騒いでいる自分が悲しくもありますです。(まあ、根っからの食いしん坊の悪食なものでしょうがないか)次回はこの素材を使って秋田で料理をしてみる、それもいいなあと今思っております。
素晴らしいドライブと案内をしていただきご両親には大感謝です。このあとも、一度家に戻り、再出発。夜は山の中の阿仁というマタギの里でも有名な場所での花火大会に。人もそれほど多くなくゆったりと間近で久しぶりにみる花火(たぶん香港返還時のヴィクトリア湾以来)は想像以上に美しく楽しい一夜となりました。そこで食べた馬肉の煮つけとビールもウマかった。秋田は今年も最高にいい思い出となったのであります。
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